定義

$x \to 0$ を考えるとき、 $f(x) = o(g(x))$ は、 \(\lim_{x \to 0} \frac{f(x)}{g(x)} = 0\) を意味する。

$f(x)$ の $x \to 0$ での小さくなり方($0$ への近づくはやさ)が $g(x)$ よりもはやい、という意味である。

以下、特に断らない限り $x \to 0$ を考える。

  1. \[x^2 = o(x) \quad\quad \because \lim_{x \to 0} \frac{x^2}{x} = \lim_{x \to 0} x = 0\]
  2. \[4x^3 + 5x^4 = o(x^2) \quad\quad \because \lim_{x \to 0} \frac{4x^3 + 5x^4}{x^2} = \lim_{x \to 0} (4x + 5x^2) = 0\]
  3. \[x = o(e ^x) \quad\quad \because \lim_{x \to 0} \frac{x}{e^x} = \lim_{x \to 0} xe^{-x}= 0\]

$f(x) = h(x) + o(g(x))$ と書いたときは $f(x) - h(x) = o(g(x))$ と解釈する。

  1. \[\cos(x) = 1 - \frac{x^2}{2} + o(x^3)\]
  2. \[e^x = 1 + x + \frac {x^{2}}{2!}+\frac {x^{3}}{3!}+o(x^3)\]

注意

すこし不思議に思うかもしれないが、 $x = o(x)$ とはならない。実際 \(\lim_{x \to 0} \frac{x}{x} = 1 \ne 0\) である。同様に、$f(x) = x + o(x)$ と $f(x) = o(x)$ は区別される。

性質

(1)

$f(x) = o(g(x))$のとき、任意の定数$k$に対して\(kf(x) = o(g(x))\)である。 \(\because \lim_{x \to 0} \frac{kf(x)}{g(x)} = k \lim_{x \to 0} \frac{f(x)}{g(x)} = 0\)

(2)

$f(x) = o(x^n)$のとき、\(x^mf(x) = o(x^{m+n})\)である。 \(\because \lim_{x \to 0} \frac{x^mf(x)}{x^{m+n}} = \lim_{x \to 0} \frac{f(x)}{x^n} = 0\)

(3)

$f(x) = o(x^m), g(x) = o(x^n)$のとき、\(f(x)g(x) = o(x^{m+n})\)である。 \(\because \lim_{x \to 0} \frac{f(x)g(x)}{x^{m+n}} = \lim_{x \to 0} \frac{f(x)}{x^m}\frac{g(x)}{x^n} = 0\)

(4)

$m \gt n, f(x) = o(x^n)$のとき、\(x^m + f(x) = o(x^{n})\)である。 \(\because \lim_{x \to 0} \frac{x^m + f(x)}{x^n} = \lim_{x \to 0} \left(x^{m-n} + \frac{f(x)}{x^n}\right) = 0\)

(5)

$m \ge n, f(x) = o(x^m), g(x) = o(x^n)$のとき、\(f(x) + g(x) = o(x^{n})\)である。 \(\because \lim_{x \to 0} \frac{f(x) + g(x)}{x^n} = \lim_{x \to 0} \left(\frac{f(x)}{x^n} + \frac{g(x)}{x^n}\right) = 0\)

略記

以上の性質を単に以下のように書く。

  1. $k \cdot o(g(x)) = o(g(x))$ (任意の定数$k$に対して)
  2. $x^mo(x^n) = o(x^{m+n})$
  3. $o(x^m)o(x^n) = o(x^{m+n})$
  4. $x^m + o(x^n) = o(x^n)$ (ただし $m \gt n$)
  5. $o(x^m) + o(x^n) = o(x^n)$ (ただし $m \ge n$)

さらに注意

定数倍で$k = -1$を考えると、$- o(x^m) = -1 \cdot o(x^m) = o(x^m)$であるので、 \(\begin{aligned} o(x^m) - o(x^m) &= o(x^m) + o(x^m) \\ &= o(x^m) \end{aligned}\) となる。最後の式変形では性質(5)をつかった。$o(x^m) - o(x^m) = 0$としないよう注意すること。

計算例

$f(x) = 1 + x + o(x), g(x) = 1 - 2x + o(x)$のとき、 \(\begin{aligned} xf(x) - g(x) &= x(1 + x + o(x)) - (1 - 2x + o(x)) \\ &= x + x^2 + xo(x) - 1 + 2x + o(x) \\ &= -1 + 3x + x^2 + o(x^2) + o(x) \\ &= -1 + 3x + o(x) \end{aligned}\) と計算できる。実際、 \(\begin{aligned} \lim_{x \to 0} \frac{xf(x) - g(x) - (-1 + 3x)}{x} &= \lim_{x \to 0}\left(\frac{xf(x) - x}{x} - \frac{g(x) - (1 - 2x)}{x}\right) \\ &= \lim_{x \to 0}\left(\frac{xf(x) - x}{x} - x\right) - \lim_{x \to 0}\frac{g(x) - (1 - 2x)}{x} \\ &= \lim_{x \to 0}\frac{xf(x) - x - x^2}{x} \\ &= \lim_{x \to 0}x\cdot\frac{f(x) - (1 + x)}{x} \\ &= 0 \end{aligned}\) となって優勝する。

まとめ

$\lim$の計算はたいがい厳しいので、ランダウの記号が使えると便利。 だが等号が普通の意味ではなく、間違いやすいので注意して使おう。